変わるお寺の役割

ワンストップで悩みが解決できる場所に

お寺は、葬儀、法事という宗教的な役割は、もちろんですが、そのことに加え、多くの人々の悩みを解決できる場所に変わる必要があると私は考えています。

いつか必ず、人は死を迎えます。それは避けることが出来ません。

私たちは、なかなか死を想像することが出来ません。それは、無理もありません。死を経験したことがないのですから。

死を迎える前にも、死を迎えた後にも人は、多くの人とつながり、関わりを持っていて、それぞれ必要な手続きがあります。

どうしても、お寺というと、葬儀、納骨、墓地と言うことから、マイナスのイメージを抱きがちです。ですが、お寺を別の角度から見ると、極めて人が集まりやすい場所であるとも言えます。

行政のコミュニティ施設や公会堂が整備される前は、多くのお寺がコミュニティ施設の役割を担っていました。

時代の流れと共に、公共施設が出来たことが重なり、人々は、お寺から離れていき、特別なことでもない限り、お寺に行くことがなくなりました。

さて、多くの人が集まるお寺というとすぐにいくつか名前を挙げることが出来るでしょう。浅草寺、川崎大師、成田山、四天王寺など。

おばあちゃんの原宿として有名なとげ抜き地蔵も人が集まるお寺の代表格です。

江戸時代から地蔵信仰を集めた寺ではありましたが、巣鴨の現在地に移転してきたのは、明治二四年です。それ以降、江戸六地蔵の真性寺とあわせ、地蔵通り商店街にまで広がりを持つ、お寺となっています。

このとげ抜き地蔵高岩寺で注目すべきなのは、「とげぬき生活館相談所」です。毎週月水金曜と四のつく日の午前一〇時から午後四時まで開かれています。

高岩寺ご住職が、あるインタビューに答えていました。

「とげ抜き地蔵は、寺だけでなく、商店街も含めて境内なんです。特に重要な役割を担っているのが、相談所です。」

このような形で、観光客だけでなく、人々とのつながりを大切にしている姿勢が伺えます。

この相談所のような働きをお寺はもっと持つといいと考えています。それも、ただ相談するだけでなく、解決できる専門家とつながり、ネットワークまで持つことです。

高齢化が進む日本では、高齢者のための様々な法的手続きがあります。それぞれ専門家が必要な場合があります。社労士、税理士、司法書士等。高齢者で相談相手がいない場合、また思うように動けない場合は、困ってしまいます。

将来のお寺は、葬儀の前や後から、様々な形で相談を受け、支援できる体制を整えるといいと考えています。今、その準備をしています。人と人が支え合う場がお寺にはあるのですから。

 

 

さらに長期を見据えて

  • 二十年後はどうなる?

これから十年後の姿を想像して、今を考えようと試みました。

その途中、ふとしたことから、二十年後はどうなんだろうと興味がわきました。調べてみました。

人口問題研究所の数値を参照しました。二十年後というと二〇三二年なのですが、分かりやすくするために二〇三〇年にします。

二〇三〇年、平成四十二年。私は七十一歳。妻は六十八歳。子どもが三八と三六、母は百三歳と言うことになります。七十一歳は、お坊さんとしては、まだまだ現役です。学園の理事長も務めている可能性が高いです。つまり、私はまだ現役です。

日本の人口は、1億6618万人という予測です。秩父市の予測は、51,139人。平成二十四年三月一日と比べると約25%の減少です。そして高齢化率は、31.6%に達しています。16,159人の方が六十五歳以上となります。

納税をしていない0歳から20歳までと年金を受給する65歳以上の総数が、20歳から65歳までの現役世代の人口を上回っています。(もちろん、20歳以下の人でも働いていれば納税しますが、ここでは、便宜的に納税しないと考えます)

将来は、現状の社会保障の仕組みでは、制度が成り立たないことは、容易に想像できます。

人口25%の減少。この数字をそのままお寺に当てはめますと、檀家も25%減少すると単純に計算することが出来ます。もちろん檀家は、世帯なので、イコールにはなりません。あくまでもイメージです。

家族構成も見てました。二十年後の日本では、単独世帯が全体の37.4%、夫婦のみ世帯が19.2%、こども一人世帯が21.9%、親一人子一人世帯が、10.3%となっています。

この社会構造、家族構成では、とうてい家を単位として維持されてきた檀家制度が成り立たなくなることも容易に想像が出来ます。

二十年後は、少ない人口で核家族が進んだうえ、生産人口も減少し、お年寄りがいっぱいのまちになっているということがこの数字から読み取れます。

これは、町だけの問題では有りません。地域の維持も困難になります。お寺も同様です。

  • お墓に関する意識調査

さて、もう一つ大事なデータがあります。少し古いのですが、第一生命ライフデザイン研究所が2005年に行ったお墓に関する意識調査です。

「先祖の墓を守るのは、子孫の義務か?」という問いに、75.7%の人が、そう思う、どちらかと言えばそう思うと答えています。

しかし一方で、「自分のお墓が将来無縁になってしまうかもしれない」と考えている人は、そう思うとどちらかと言えばそう思うをあわせると24.6%になります。子どもがいる人では、20%なのに対し、子どもがいない人では、48.6%になっています。子どもがいても2割の人は、将来お墓の跡取りについての不安を抱いていることが分かります。

 

新たな仕組み作りが急務

  • まとめてみると

・日本の人口減少は、歯止めがきかない。

・世帯構成が変化し、一人世帯、核家族世帯率が増える

・先祖の墓を守るのは、子孫の義務だと思うが、自分のお墓の将来は不安である

お寺、特にお墓をどう守っていくかと考えるときに、この3つのポイントが重要になります。人口減少、家族構成の変化という社会の流れに加え、墓地継承の不安を抱いている方が増えているという課題が浮かびます。

十年後のみならず、二十年後、いやさらにその先も見据えた墓地の維持とお寺の護持について、真剣に取り組まなければならない時期に来ています。

これは、国が取り組もうとしている、社会保障の問題と似ているように思います。

社会保障は、年金・医療・介護それにこの度の一体改革で子育てが加わり、4つの柱になります。この4つの柱は、「もしもの前」つまり生きている間の課題です。

お寺の場合は、「もしもの時」と「もしもの後」が課題です。ですが、課題になっている背景は同じです。

子どもや孫の代の社会で安心して暮らせるようにするための「待ったなし」の新たな仕組み作りが必要です。

お寺は、お墓の将来の不安を取り除き、みんなが安心して人生の最期を迎えられるようにしていきたいと考えています。「もしもの時」も「もしもの後」も安穏でいられるようにしていくことが、お墓の維持とお寺の護持に必要なことでだと考えています。

お寺は、子どもがいるいない、家族がいるいないに関係なく、安らぎの場でなければなりません。

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